「ねえ、なんだか暗くなってきたわ」
ふと、女の子が空を仰いでいいました。
道の左右に広がる木々の枝がよく張っているために、アランたちの足元にはもとから光が届きにくかったのですが、
言われてみればたしかに森の中は先ほどよりいっそう暗くなっている気がします。
女の子につづいてアランも空を見上げてみると、密に重なりあった枝越しに見えるお日さまはすでになかば以上灰色の雲に覆われており、
雲が広がる勢いはもはやとどまりようがないかに見えました。

思ったとおり、雲はまもなくお日さまをそっくり覆いかくしてしまい、空一面はすっかり灰色になろうとしています。
雨になるのかな、とふたりは同時に思いました。
けれどその一瞬後、遠くからごろごろという音が聞こえてきたので、ふたりは同時に身をすくめました。
でも、アランはすぐに思い出したように背中をしゃんと伸ばしました。
本当はこわいのだけれども、男がみっともなく縮こまっているわけにはいきません。
となりを歩いている女の子を見やると、先ほどまでアランにいろいろと反論していた強気さはあとかたもなく、
心配そうに空を見上げてはぎゅっとくちびるを噛んでいました。
そしてふと、歩きながら何も言わずにアランの手をそっとにぎってきたので、彼は少しびっくりしました。
(なあんだ、口ではなまいきばかりだけど、いざ雷が来たら、その辺の泣き虫の女と同じじゃないか)
とアランはばかにしたように頭のなかでつぶやきましたが、それを口に出す代わりに、
それとなく女の子の手をにぎりかえしました。
そして、自分がどんなにおちつきはらっているかを見せようと、こう言い聞かせました。

「別にこわいことなんかないだろう。遠くで雷が鳴っているだけじゃないか。
 ぴかっと光るのもみえないし、このあたりに落ちるはずがない」
「え、ええ」
そうは答えながらも、女の子はいっそう強くアランの手をにぎってきました。
その手があんまりやわらかくて温かいので、アランは
(はん。なんだ、こんな弱虫)
と頭のなかで一生懸命くりかえし、きもちを動かされたりするまいと努めなくてはなりませんでした。

けれど、女の子にそうは言ったものの、彼女がひどく心細そうなのも分からなくはありませんでした。
たしかに、空にはまだ稲妻のきざしは見えないけれども、それよりもずっと近く、彼らをとりまく森のようすが、
空に広がる黒雲とともに何だかおどろおどろしさを増してきたのです。
まだまだ夕方には遠いはずなのに、
こうもりの影がちらついたりふくろうの鳴き声が聞こえてきたりしてもおかしくないほどの薄暗さ、
そして空のごろごろとは対照的なほどの静けさが森のなかには満ちていました。

一歩一歩進むたびに、薬草園や修道院の建物ではなくどこか異界へと近づいているような気さえしてきます。
けれどここで踵を返すわけにもいきません。
戻ったら正真正銘、人の気配の絶えた空き地と井戸しかないのです。
ふたりは今や無言になり、互いの手をにぎりあったまま早足で歩きつづけました。
突然、右手のほうでかさこそという音がしました。
あとから考えれば、あれは女の子がだいぶ前に見失った野うさぎだったのかもしれない、と見当をつけることもできたのですが、
このときのふたりにそんなことを思いつくのは無理というものでした。
何しろ、いまにもいかづちが天から降ってこようかという暗さのなか、あまりに唐突に死のような静寂がやぶられたのです。




「今の、何かしら」
「か、風だろ」
「でも、ほかの草むらは静かだったわ」
「弱い風だったんだ」
「ううん、さっき木立ちのむこうに、何か黒っぽい影が見えた気がする」
「影?」
「ここ、地底の口が近いんじゃないかしら」
「ばかを言うな、修道院の敷地じゃないか」
そう反論しつつもアラン自身、言われてみればそうかもしれない、と心のすみでみとめないわけにはいきませんでした。
歩き進むごとにその疑念はますます大きく広がり、アランの心をいっぱいにしてゆきます。

「地底の口」とは、神様に逆らった罰で大地の奥深くに閉じ込められている悪霊たちのすみかへと通じる場所のことです。
地上に一カ所きりではなく、人間が近づきにくい天険の地や人間の血がたくさん染み込んだ古戦場、
人間の悪意が密集した事件の現場など、あらゆる場所にこの口は開いており、
または突然開くことがあり、万が一そこに足を踏み入れて落下したら二度とこの世に戻ってこられないといわれているのです。

ただし正統な教典にはどこにもそのような記述はないため、
教会はこれを俗信と断じ、いたずらに人々の不安を煽る者がいたら処罰することさえ辞しません。
けれど、同一の宗教を奉じるこの大陸の俗界には、国や地域を問わずおおむねこの「地底の口」伝承が広まっており、
教会での活動を離れた生活一般の場では、何かにつけて「口」の存在を危ぶんでは守護聖人の加護を乞う人々が少なくありません。
それは民から王侯まで同じことであり、ことに子どもたちは何かにつけて
「そんなことをしたら悪霊に魅入られて『口』に引き込まれてしまいますよ」
と叱られるため、日ごろから意識する機会が多いのです。

生来あまり信心深くないアランは、これまでばあやたちにそうたしなめられることがあっても大して気にしたことはなかったのですが、
今だけはなぜか、じわりじわりと呼吸が苦しくなってきたように感じられました。
つたに覆われた修道院鐘楼の遠影、とこしえの眠りについたかのような深い森、
みるみるうちに暗くなった空、神罰のきざしのようにとどろく雷鳴、
これらがいま、幾重もの壁のようにふたりの四方と頭上に立ちこめているのです。
まして、この息吹の週に地上に満ちるふしぎな力とは、善き精霊に由来するものもあれば悪しき存在に由来するものもあると言われています。
周囲をよく見回し耳をよくすますほどに、異界へと通じる道がこのあたりに開けていてもまったくおかしくない、とアランには思われるのでした。

自分の手をにぎる女の子の手の力がいっそう強くなってきたことを感じ、アランは思わずにぎり返しました。
そのときふと小道の左手、空と同じく暗色に染まった木々の向こうから何者かが姿を見せました。
太い幹の陰に佇んでいるため輪郭もさだかでありませんが、どうやら二本足で立っているようです。
森番を務める修道士だ、とアランはとっさに思い、安堵の息とともに声をかけました。
面識のない人間とはいえ、自分たちを確実に保護してくれる大人が身近に現れたというのはたいそう心強く感じられたのです。
「貴僧、ちょうどよいところに来られた。天気がおちつくまで我々を番小屋にかくまっていただけないか」
周りの大人が聖職者に対するときの口調を精一杯まねて尋ねてみましたが、返事らしい返事は返ってきませんでした。
アランは念のためもう一度同じことを言いました。影はやはり返事をしません。

けれど、ちょうどそのとき彼方の空でひときわ大きな雷鳴がとどろいたかと思うと、人影は無言のままアランたちに近づいてきました。
それは頭からぼろ布をかぶっており、布に覆われていない部分の手足は枯れ木のように痩せていました。
声を発するかわりに、しゅうしゅうという獣じみた吐息が耳元に聞こえてくるような気がします。
およそこれほど生気らしい生気のない生き物に、アランは会ったことがありませんでした。
アランたちに歩み寄りながら、その人影はふと手を差し伸べてきました。
そして、ごくゆっくりと指先を曲げ、そば近くへと乞い招く仕草をします。
今にも朽ちなんとする松の枝のように節くれだったその指には、赤い血が通っているとはとても思われませんでした。




逃げよう、と叫びあう前に、ふたりはもう駆け出していました。
足元では土と枯れ葉が休みなく音をたて、耳元では雷鳴のかけらを乗せた風がうなります。
全力で逃げきろうとすれば、くるぶしまであるスカートをはいた女の子など足手まといにしかならないことはアランにも分かっていましたが、
彼は手をつないだまま走りつづけました。
どれだけ走りつづけたのでしょうか。
始めのうちは恐ろしさのあまり何も感じなかったとはいえ、さすがに足が重くなりつないだ手もしびれてきたころ、
ふたりはようやく森の出口、薬草園側からいえば入口にたどりつきました。
左右の木々がとぎれたため、一瞬明るいところに出たように感じられましたが、よく見れば空はまだ暗く、遠くの雷鳴も鳴り止む気配はありません。
ともあれ、地底の口とその住人らしきものがさまよう場所から離れきることができたと知り、ふたりは初めて深い息を吐きました。
ところがこのとき、女の子は小さな叫び声を上げました。

アランが見やると、左足から靴がなくなっています。
「どうしよう」
女の子は呆然とした声で言いました。
「あんまり一生懸命走ったから、脱げたことにも気がつかなかったんだわ」
そして初めて痛みをおぼえたように眉をひそめましたが、足がずきずきする、もう歩きたくない、とは言いませんでした。
その代わり、泣きそうな声でこうつぶやくのが聞こえました。
「どうしよう。せっかくおばあ様にゆりの文様を縫い取っていただいたのに。なくしちゃった」
そしてまもなく、その声には本当に涙がまざり、まだ荒いままの吐息とともに小さなしずくが地面にこぼれ落ちました。
「ただの靴じゃないか」
なぐさめにはならないと知りつつ、アランは何でもなさげに言いました。
「おまえの家は、別に衣食に困るようなところじゃないだろう。たぶん」
「でも、あれは特別だもの。せっかくマヌエラとおそろいだったのに。あの子はあんなによろこんでいたのに」
そしてしゃくりあげるのを呑み込んでから言いました。

「もうぜったい、取り戻せないわ」
「そんなことはない」
「え?」
「探してきてやるから、ちょっと待ってろ」
「だめよ!『口』の番人にさらわれちゃうわ」
「そんなことあるはずないだろ。あれはきっと、森に迷い込んだ巡礼者か何かに決まってる。
 ここの聖者さまの霊験を求めて長旅をつづけたから、身なりがあんなに粗末なんだ」
さっきまで生きた心地もせずに走りつづけていたことなど忘れたかのように、アランはばかにした口調で言いました。
本当のことを言えば、あの恐ろしさを忘れることなどできようはずもなかったのですが、今はこう言わなければ話が進まないように思ったのです。
そしてこう付け加えました。

「それに、屋根のあるところに戻るまでにはまだ薬草園を抜けないといけないし、いつ雨が降り出してもおかしくない天気だろ。
 おまえが裸足でぬかるみを歩きたくないって言い出したらめんどうだ」
「そんなわがまま、言わないわ」
「おれはおぶってやる気はないからな。そこで待ってろ」
あとは女の子が何と言おうと返事をせずに、アランはいま来た道を戻り始めました。
本当は早足で通り抜けることさえいやだったのですが、わざと背中をまっすぐにして、薄暗い小道の上に目を走らせながら歩きつづけました。




アランは最初、女の子がそんなに長い間痛みにも気づかず靴下だけで走りつづけられるはずはないのだから、
靴は森の出口からほど近いところに転がっているはずだ、と考えていたのですが、
あにはからんや、森の相当深くまで戻ってきても、縫い取りのある女物の靴は見つかりません。
空はまだ暗いし、頭上には枝が張り巡らされているし、アランはさすがにそろそろ引き返したくなってきました。
とりあえず勇気は証明できたのだから、手ぶらで帰っても女の子はばかにしたりがっかりしたりしないでしょう。

アランはついに立ち止まりました。引き返すならこの辺りが潮時です。
覚えているかぎりでは、赤土が目立つこの地点を過ぎると左右の木々が一段と繁くなり、
頭上はますます暗くなり、そしてあの恐ろしい番人が姿を現した区域に入ってしまうのです。
そうなったらもう、今度こそ取り返しがつかないかもしれません。
けれど、あの子はきっとまだ泣きそうな顔をしているのだと思うと、アランはとうとう、ふたたび前に踏み出しました。
空には雷がたえまなくとどろいているというのに、暗く冷えきった森のなかは、
自分の足元にひびく枯れ葉の音さえ恐ろしくなるような、そんな奇妙な静けさに満ちていました。

「あっ」
小さく叫び声を上げて、アランは道の左脇に駆け寄りました。
ひときわ太い大樹の根元に、何か小さな赤いものが転がっています。
拾い上げてみると、それは果たして女の子用の靴の片方でした。
足の甲にあたる部分には、五片の花びらを広げた白百合の縫い取りもあります。
手のひらに載せたそれを見つめながら、アランはお腹の底から深い息を吐きました。
これでやっと、心おきなく森を駆け抜けて帰ることができます。
そのとき後ろから、枝葉がこすれるようながさごそという乾いた音が聞こえてきました。
振り向くと、あの背の高い無言の人影が道の反対側の木陰から出てこようとするところでした。
声も出ないほどの恐ろしさにとらわれて、アランは一歩あとじさろうとしましたが、
大きめの石にかかとを乗り上げてしまい、均衡を崩してあおむけに転んでしまいました。
物言わぬ影は、今度は招き寄せる仕草をするかわりに、
アランに向かってやせ細った人差し指を突き出し、自分が出てきた木陰のほうをゆっくりと振り向きました。

仲間を呼ぶんだ、とアランは思いました。
あるいはあの木陰にはすでに地底の口が開いており、手下である下級の悪霊を地中から呼びだそうとしているのかもしれません。
そうなったらもうおしまいで、あとは両手両足をつかまれたまま悪霊たちのすみかに引きずりこまれるしかないのです。
(もう、母さまに会えない)
真っ白になってゆく頭のなかで、アランがかろうじて思い浮かべたのはそのことでした。
しばらくかたわらを向いていた悪霊が、またこちらに顔を向けゆっくりと歩み寄ってこようとします。
差し出されたその手は今度こそ、アランを逃すまいとするかに見えました。

「 い、いやだ」
アランは小さくつぶやきました。物音をたてることさえ罰せられるような気がしたので、それはほとんどかすれ声でした。
けれどこうしていちど声を発してしまうと、アランはもう、自分を抑えることができなくなりました。
「いやだ、―――いやだ!」
自分でも思いがけないことに、アランはつと立ち上がると立ちはだかる影にぶつかってゆきました。
身長ではとてもかないませんでしたが、肉の落ちきった相手の身体は思いのほか軽く、
アランの渾身の体当たりを胴体に食らうと悪霊はそのまま後ろに倒れてしまいました。
悪霊と一緒に倒れ込みながら、アランは「やった」と思いましたが、
すぐにまた、悪霊のはずなのにかわせないなんておかしいな、と思いました。




けれど、なぜだろうと考える前に、いきなり強い力で首根っこをつかまれ、悪霊からひきはがされるのを感じました。
何が何だか分からず足をじたばたさせていると、耳元で呆れたような、なだめるような声が上がりました。
「子どもが元気なのはいいことだが、相手はわきまえねばならんぞ」
声の野太さとは対照的に、草地の上にアランを下ろす手つきはごく丁寧でした。
呆然と辺りを見渡すアランの視界に入ったのは、腰をさすりつつ地面から起き上がろうとする悪霊と、
それを助けようとする大柄な修道士の姿でした。
修道士はまだ三十前くらい、出家者としては比較的若いようです。

「おまえ、―――ではない、貴僧はなぜ、その者を助けるのだ。ち、地底の口を守る悪霊ではないか」
「なんと忌まわしいことを口にする。子どもだからとて、口にして許されることと許されぬことがあるぞ」
そう言って若い修道士は、おどかすように片方の眉を上げました。
その動作にはどことなく、茶目っ気もふくまれているように見えます。
アランたち一行が修道院の正門に到着したときは院長さまみずから丁重にお出迎えくださったというのに、
この年若い修道士は自分を遠慮なくつかみあげたばかりか、あまりにくだけた話し方をするので、
アランは「無礼者」と叫ぶより先にぽかんとしてしまいました。

が、敷地のはずれに位置するこの森の見回りをつとめるような若輩修道士ならば、
王妃ならびに王太子来訪の告知自体を受けていなくともしかたがないのかもしれません。
それにこの歴史と権威ある修道院は貴人の参詣や滞在などさほど珍しくもないにちがいないので、
供も連れていない自分は地元の貴族の子弟とでも目されたのだろう、とアランは見当をつけました。
さらに言えば、出家者にはよくあるように、おそらくこの修道士自身も中小貴族の次男三男あたりであろうため、
出身階級は同じということで、アランの上等な身なりにそれほど臆することもないのでしょう。

「こちらのおかたは、わが院の長老バルテルミさまだ」
「長老?長老さまがなぜこんなところに?」
「バルテルミさまはこれまで何度となく院長職への就任を打診せられた高徳の御身であらせられるが、
 あくまで位階とは縁なく清貧を貫かれようと、数年前からこの果樹園のはずれに独居用の庵を建ててお住まいになっておられるのだ。
 ちなみに私は、ご身辺の力仕事などにあずからせていただいている見習修道士のシモンという者だ」
「で、でも、先ほどは問いかけてもなんら返事がなかった。だからあやしんだのだ。耳が不自由であられるのか?」
「実は独居を始められてよりこのかた、バルテルミ様は無言の行を積んでおられるのだ。
 すでに神に終生の誓約を捧げられた以上、たとえ死を眼前にしても静寂を乱してはならぬ御身なれば―――」

そのとき、バルテルミさまと呼ばれた人物が、アランたちに何ごとかを伝えんとするかのように手をゆっくりと左右に振りました。
お年のわりに上背の保たれているかたではありますが、ぼろきれのようなフードの下からのぞいて見れば、
深いしわに囲まれたふたつの青い眼がやさしくアランを見つめ返しました。
「いたずらに怯えさせてしまい申し訳ない、とのおおせだ。
 バルテルミさまは先ほどこの場所で君たちの姿をごらんになって、
 雷雨が来るといけないから庵においでなさいとお伝えするつもりだったのだ。
 だが君たちが闇雲に逃げてしまったので、無事屋根のあるところにたどりついたかどうかと案じておられたところなんだ。
 そういえば、女の子が一緒だったそうだが、その子はどうした」
「あ、ああ、森の出口で待っている」
「ではなぜ君はひとりだけここへ戻って―――そうか、その女物の靴を探しにきたんだな。
 立派に騎士役を果たしたものじゃないか」

シモンと名乗る修道士は、どこにでもいるほがらかな若者のように白い歯を見せて笑いました。
見習いというからには世俗を離れてまだ日が浅いのでしょう。
彼のことばにはひやかしだけでなくいくばくかの賛辞が含まれていることをアランは感じとりましたが、居心地の悪いことにちがいはありません。
森の出口に戻りたそうな少年のそぶりに気がついたのか、シモン修道士は言いました。
「ああ、君の小さな淑女をあまり待たせても気の毒だ。
 バルテルミさま、この少年を果樹園の外まで送るお許しをいただいてもよろしいでしょうか」

しかしバルテルミさまがお答えになる前に、アランはあわてて口をひらきました。
「いや、大丈夫だ。ひとりでちゃんと戻れる。駆け足で戻らないと、雨に降られるかもしれないし。
 ではバルテルミさま、大変な無礼をはたらいてしまい申し訳ありませんでした。もう二度と、このような不注意はいたしません」
そう言って老僧に頭を下げると、アランはシモンの声に耳も傾けず、きびすを返して駆け出しました。
シモンはとても気のよいお兄さんに見えましたが、あの女の子の前でたったいまの顛末を暴露されてしまったら格好悪いと思ったのです。




今度は自分ひとりで走ったためか、先ほどよりもずっと早く森の出口付近にたどりつくことができました。
もうしばらくしたら左右の木々がとぎれようというあたりで、前方のひらけた草地にあの女の子が待ちつづけているようすが視界に入ると、
アランは自分でも思いがけないほど胸がはずみました。
駆け足も自然と早まってゆくかのようです。
けれどふと考え直し、アランは森の出口の手前で走るのをやめ、わざとゆっくり歩きながら女の子の前に姿を現しました。
女の子ははっと気がつくと、片足は靴下のまま息せききってアランのもとに駆け寄ってきました。
「ああよかった!ぶじに戻ってきたのね」
「ほら、見つけてきてやった。これだろう」
「まあ、ありがとう……!」

女の子は口元を押さえながら、胸がいっぱいになったようにアランを見つめました。
そして、彼の態度がごくおちつきはらっているのに気がつくと、いっそう感心したようにまじまじと見つめました。
期待したとおりの効果が上がったことを知り、アランはますます得意なきもちになりました。
女の子は不安が半分、感嘆が半分といった顔で言いました。
「とっても心配してたのよ。ぶじに戻ってこられて本当によかった。
 あなたはゆうかんな男の子なのね。わたしは森のなかを思い出しただけでこわくなってしまうのに」
「こわいことなんてあるもんか。あれはただの見まちがいだ。おれは最初から分かってたんだ」

アランがどれだけえらそうな口を叩こうと、今度は女の子は何も反論しませんでした。
しかしふと、女の子はアランの胴に目をとめて言いました。
「あら、すずらんの花が」
「え?―――あっ」
いましがた装っていたおちつきも忘れて、アランは小さく叫びました。
女の子から借り受けて革帯に挿しこんでおいたすずらんが、いつのまにか首のところで折れていたのです。
最初にふたりで森の出口まで駆け抜けてきたときに、どこかの茂みに茎をひっかけてしまったのでしょうか。
あるいは先ほどバルテルミ様にぶつかっていったときに、うっかりおしつぶしてしまったのかもしれません。
つぶれてひしゃげた花たちを下げるすずらんの頭は、深くうなだれた祈祷者のように、帯に挟まれた茎に対して鋭い角をなしていました。




「母さま」
地面を向いたままの花冠を見つめながら、アランはわれ知らずつぶやいていました。
声に出してみると、起こってしまったことの取り返しのつかなさがいっそう重く感じられるようでした。
もうだめなんだ。アランはまた口のなかでつぶやきました。
もう、だめになってしまったんだ。
花が折れてしまってはもう、春の精に願いごとはできない。
アランはお母さまの姿を思い出しました。
この馬車旅行のあいだにも少しずつ大きくなっていた、お母さまのおなかを思い出しました。
春の精に告げたかったアランの願いごと、それはお母さまが半年後に安らかなお産をお迎えになることでした。
ジュスティーヌ王妃は、一年と少し前、下の妹姫ロクサーヌをお産みになったとき三日がかりでお苦しみになられ、
すわ生死の境かとさえ侍医団に危ぶまれたのです。
あの数日間のいても立ってもいられないきもちを、アランは決して忘れることができません。
そしてロクサーヌの誕生以来、
お母さまが次にご出産なされるときは今度こそ本当にみまかられてしまうかもしれない、という恐れにずっととらわれてきたのでした。

アランはすずらんを帯から抜きとり、手にもって眺めつづけました。
首のところで折れてしまったもの言わぬ花は、何ごとかをひっそりと象徴するかのようでした。
アランはかぶりを振りました。
どうしてそこまで思いつめてしまうのか、自分でもばかげていると思いました。
けれど、心細さが胸の奥でつのってゆくのを止めるすべはありませんでした。
先ほど森の出口にたどりついたときの安心感、女の子の顔を見たときの晴れ晴れとしたうれしさがあまりに大きかったために、
自分で思うよりずっときもちがゆるんでいたのかもしれません。
アランは鼻の奥が熱くなってくるのを感じました。
その熱さはじわじわと広がってゆき、目元がほてりはじめるまでに時間はかかりませんでした。
みっともない、格好悪いと思っても、涙がゆっくりゆっくりとこぼれ落ちるのは止めることができません。
女の子はあきれたように自分を見ているだろうと思うと、アランは顔もあげられませんでした。

ふと、背中が何か温かいものに包まれるのを感じました。
それは女の子の両腕で、アランはほっそりとした腕のなかにそっとだきしめられたのでした。
「あなたのお母さまは具合がお悪いのね。それで早咲きのお花を、お母さまに見せてよろこんでいただきたかったのね」
おまえなんか何も分かってないくせに、とアランは思いました。
でも、女の子の手をふりはらうことはしませんでした。
あのすずらんは本来女の子のもので、女の子に無傷で返すべきものだったのに、
彼女はそのことを忘れたかのように、アランの背中をやさしく撫でつづけていました。

「あなたのお母さまが早くよくなられるように、わたしもお祈りしてあげる。新しいお花をいっしょに探してあげる」
「すずらんじゃなきゃだめなんだ」
「じゃあ、すずらんが見つかるようにお祈りするわ。きっとだいじょうぶよ」
女の子の体温があまりに身近で、その声があまりに優しかったので、アランももう心のなかで、ばかなやつ、とはつぶやきませんでした。
そのかわり、しっかりとだきしめられているうちに、この女の子の髪や首筋はとてもいい匂いがすることに気がつきました。
名前は分からないけれど、どこかなつかしい匂いでもあります。
そういえば、ふだんは麝香を好まれる母さまも、ときおりはこの香りをまとっておられることがある、とアランは思い出しました。




何となく慕わしさをおぼえて首筋に顔を近づけると、女の子ははっとしたように後ろへ跳びのきました。
野原の仔うさぎのようにあまりにすばやく唐突に逃げられたので、アランはすっかり面食らってしまいました。
けれど女の子を見やると、まっかな顔をして胸を両手でおさえています。
どうやらおどろかせてしまったのは自分のほうらしい、とアランはようやく気がつきました。

「一体どうしたんだ」
「こういうことは、しちゃいけないのよ。わたしいいなずけがいるんだもの」
「こういうことって何だよ」
「あなた、わたしにさっき―――」
言いかけたまま、女の子は顔をいっそう赤くして口ごもりました。
「さっき、なんだ」
言いながら、アランは少しずつ女の子に近づいていきました。
女の子が言いかけて言えなかったのは「くちづけ」だと彼には分かっていましたが、
女の子がなぜ、そんなことでここまではずかしそうにしているのかは分かりません。
けれど、まっかに染まったその両頬、潤みをおびていっそう黒みを増したその瞳を見ていると、
この女の子のいいなずけのことが少しだけうらやましくなってくるのを感じました。

そしてそのとき、目の前が明るくひらけたかのように、アランははっと気がつきました。
はらませるとはきっとこれのこと、女の子のくちびるにふれることなのです。
「おまえのおふくろをはらませてやる」という宣言がこの上ない罵りになりうるのも、
そのひとことを耳にするやお坊さまがものすごい剣幕でお叱りになるのも無理はありません。
誰であれよその男のひとが自分のお母さまにくちづけするのを見たくはないものですし、
何よりそれは、お父さまとお母さまが神さまの前でとなえた厳粛な結婚の誓いをないがしろにするふるまいだからです。

「おまえはさっき、はらませられるものならはらませてみろって言ったじゃないか」
アランはとがめるように言いました。
「言ったわ、言ったけれど」
「これがはらませるってことなんだ。いまは時と場所も申し分ないから、おとなしくはらませられろ」
「えっ……でも、これはだめよ、よくないことだわ」
「淑女に二言があっていいのか」
「でも、でもだめなんだもん」

まっかな顔をますます赤らめながら、消えいりそうなほど小さな声であらがう女の子のようすを見ていると、
アランは何か胸のうちに燃え上がるものを感じました。
単にかわいらしく思うというのではなく、この女の子が涙ぐむようなことをもっとしてやりたい、
もっとはずかしそうな、いたたまれなさそうな顔を見たいというきもちでした。

もちろん、生理的に自分をいやがっている相手というのはすぐ分かりますから、
アランとてそのような女の子に無理やりくちづけを迫るような非道なまねはしません。
目の前の黒髪の女の子がアランをどうしても惹きつけるのは、心の底ではアランを受け入れてもいいと思っているらしいにもかかわらず、
何か重々しい使命感のために自分をしばりつけ、アランに対してだけてなく自分自身の弱さに対してもなんとか抗おうと、
必死にがんばっているからなのです。
アランは少しずつ距離をちぢめ、ほとんど女の子の両肩をつかまんばかりになりました。
そのとき、ひとすじの光明を見いだしたような顔で女の子が言いました。

「あなたもいいなずけがいるのでしょう。その子のためにみさおを立ててあげなくちゃ。
 もしわたしが、あなたが最初にはらませた相手になってしまったら、その子にとても申し訳ないわ」
「大丈夫だ、おれはもうとうに色々な女をはらませているから。おまえが申し訳なく思うことなんかない」
聖歌隊の主席歌手のように堂々としたアランの答えに、女の子はことばを失ったようにあぜんとしました。
かと思うと、いままでのおっとりとした物腰からは想像できないくらい猛然と怒りだしたのです。
今度は彼女のほうからアランの肩につかみかからんばかりでした。
「よくもそんなことを言えたわね。
 いいなずけをうらぎって平気なばかりか、ほかの誰かひとりにみさおを立てるというのでもないなんて。
 わたしを誰だと思ってるの。あなたのその他おおぜいに加えられるなんてまっぴらだわ」

女の子は大きな黒いひとみをいっそう大きく見開いて、今にも小さなこぶしを振り上げんばかりでした。
ふしぎに思ったのはアランのがわです。
ガルィア宮廷に出入りする女の子たち―――小間使や侍女見習い、そして貴族令嬢たちのなかには、
アランにくちづけされていやがった子はこれまでひとりもいませんでした。
彼にはじめてくちづけをくれたのはとある公爵令嬢で、父方のいとこにあたるきれいなお姉さんでしたが、
短くやさしいくちづけのあと、彼女はこう言い添えたのでした。
「殿下、いまに国中の娘たちがあなたに夢中になりますわ」

はたして国中の娘たちからほれられるようになったかどうかは分かりませんが、
アランはその後長じるにつけ、周りにいる女の子たちが自分のことをりりしいと思っているらしいことに気がつきました。
そしてそういう女の子たちは、アランがごく気まぐれにくちづけを迫ろうと、
身分の上下にかかわらず唯々諾々として受け入れてくれるのです。
どうしてこの女の子は「みさお」などというものにこだわったあげくこんなにぶしつけに腹を立てるんだろう。
おれのことがちょっとは気になっているくせに。
アランはつくづくいぶかしく思いました。

けれど同時に、この女の子の真剣に怒った顔は、恥ずかしさのあまり泣きだしそうな顔と同じくらいかわいい、とも思いました。
でもそれをそのまま伝えるのは、なんだか悔しいし恥ずかしい気もします。
しかしながら、女の子には好きになってもらいたい、おとなしくはらまさせてもらいたいとも思います。
まだまだ怒りに首まで赤く染まっている女の子のひとみを正面から見つめると、アランはまじめな顔で言いました。
「その他おおぜいなんかじゃない。おまえのことは、特別にしてやる」
「……なっ……」

なんてえらそうな子なの、あなたって本当に、と女の子は言いかけたように見えました。
けれどそれを最後まで口にすることはなく、代わりにアランに聞かせたのは、消えいるようにのみこんだ吐息の音だけでした。
赤い頬はいっそう赤く火照りだし、黒いひとみはぱちぱちと瞬きをくりかえしました。
アランはもはや耐えがたいきもちになり、ものも言わず女の子に顔を近づけると、
たがいに温度を感じとれるくらいのあいだ、くちびるを重ねていました。




ようやく顔を離したとき、女の子のひとみはどこか心細げな色を浮かべたように見えました。
けれど一瞬後、力いっぱいふりはらうようにしてアランの腕から逃れると、女の子は両手で顔をおおってしまいました。
細い両肩がびくりとしたかと思うと、それは波打つようにふるえつづけます。
あまりのことに、アランはすぐには声も出せないほどびっくりしました。
女の子もはらませられたがっていると、そう信じてはらませたのに、まさかこんなに傷つくとは思いもよらなかったのです。

「どうしたんだ。そんなに、いやだったのか」
「ううん。でもわたし、いいなずけをうらぎってしまった。
 ほかの男の子にはらませられた女の子を、あのかたが好きになってくださるとは思えないわ。
 わたしもう、お嫁さまになることはできないんだわ」
「なんだ、そんなことか」
アランはほっとしたように言いました。
「大丈夫だ、心配するな」
「―――あなたが、お嫁さまにしてくれるの?」
「いや、めかけにしてやる」

ばしぃん、と大きな音が、徐々に黒雲が去り始めた空の下にひびきました。
何が起こったのかまったく理解できず、アランはぼうっとして目をまたたかせました。
どうやら左の頬をはたかれたらしく、痛みと熱さがだんだんと横顔に広がってゆきます。
何てやばんなやつだ、とアランは怒るより先に呆れましたが、目の前の女の子の顔は、
今まで見たどんな表情よりもはげしい怒りをたたえているようでした。
「あなたって本当にさいていな男の子だわ。
 ひとのみさおを奪っておいて、めかけにしてやるから安心しろだなんて。
 よくもそこまでわたしをばかにしてくれたわね。
 都に帰ったらお父さまにぜったい言いつけてやるんだから。
 あなたがおびえたらかわいそうだと思っていままでだまっていたけれど、
 たとえあなたが外国人でも、お父さまはあなたの家族ごとほろぼすことぐらいかんたんなのよ」
「やれるものならやってみろよ」

今度はアランが機嫌を悪くしながら応ずる番でした。
一介の貴族だか豪族だかの娘から「家族ごとほろぼしてやる」などと不遜きわまりない口を叩かれたのも腹がたちましたが、
何にもまして、めかけにしてやるとまで約束してやったのにこんなふうに誹謗中傷にさらされるなど、まったく納得がゆかなかったからです。
お父さまがおめかけを置いていらっしゃらないため、アランもめかけなるものを実地で見聞したことはないのですが、
臣下たちの話の断片をつなぎあわせるかぎりでは、お嫁さまはお父さまお母さまによろこんでいただくためにめとるものですが、
めかけは自分のよろこびのために身辺に迎えるものなのです。
(おれがここまで重んじてやろうとしてるのに)




そう思って口をひらこうとした矢先、
女の子が突然アランの肩ごしに何かを見つけたかのように小さく叫び声を上げ、そちらに駆け出してゆきました。
アランがふりかえってみると、侍女と護衛たちを引き連れたお母さまの姿と、アランの見知らぬ婦人たちの姿がありました。
見知らぬ婦人たちはみなわりと年配で、上品でおちついた装いはガルィアの宮廷女官のそれにどことなく似ていましたが、
刺繍の文様は明らかに異国風でした。
女の子が駆け寄っていったのはアランのお母さまではなくそちらの人々であり、
慣れ親しんだ人々のふところに戻れたことでふいに気がゆるんでしまったのか、
あるいはまだ心ゆくまで涙を流していなかったのか、
彼女は先頭に立つ優しそうな老婦人の膝にしがみつくとおいおい泣き始めました。
その婦人はスパニヤ語で女の子に話しかけていましたが、ぽつりぽつりと聞こえてくるかぎりでは、
女の子のことを「姫さま」と呼んでいるようでした。

アランのお母さまはといえば、アランを呼びよせてくださるでもなく、
女の子たち一行のかたわらで心配そうに耳を傾けているばかりです。
しかしながら、女の子の訴えのなかに「はらませられた」という語が混じったかと思うと、
お母さまの美しいお顔は東洋渡りの磁器のように生気なく青ざめました。
そのご様子を見るとアランは不安になり、ついに自分から一歩ずつ、お母さまたちのほうに近づいてゆきました。
あの娘は一体みんなに何をふきこもうとしてるんだ、と憤りをおぼえたのはたしかですが、
それよりむしろ、こういうときこそ男らしく逃げも隠れもせずに答弁しなければ、という使命感に駆られたのです。




「アラン」
お母さまは、かつてアランが聞いたこともないほどこわばった声でおたずねになりました。
「レオノールは、―――あの女の子はあなたにひどい仕打ちを受けたと言っているわ。
 本当なの?あなたは本当に、まさか、―――ああ、口にするのもけがらわしい」
「本当です」
アランは神妙な顔で答えました。
「でも、決して、母さまが疑っておられるようなことではないのです」
「本当に?」
「本当です。ぼくは卑怯なふるまいとは無縁でした。正々堂々とあの娘をはらませたのです」







そのときお母さまのお顔に浮かび上がったあざやかな朱色は、アランに目の覚めるような印象を与えました。
けれども、その後修道院附属の迎賓館に戻ってから受けた折檻は、
百合の花のようにたおやかでお優しいお母さまのなさりようとはとても思われぬほどの酷虐ぶりでしたので、
その衝撃があまりに深かったためでしょうか、
アランは結局、その日の出来事の一部始終を忘れるに至ったのでした。

一方の女の子はといえば、あのあと付き添いの婦人たちに促されるままやはり迎賓館の一室に戻り、
念入りに沐浴させられたかと思うと、急遽帰国の途につくこととなりました。
そして帰りついた先の宮廷では、学者やら高僧やらまじない師やら、
国王の意を受けたあらゆる賢人たちが修道院訪問の記憶をぬぐい去ろうと手を尽くしたため、
女の子もやはり、あの日自分をはらませた男の子のことはすっかり忘れてしまったのでした。







※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※







そののち七年ほどして、アランと黒髪の女の子はぶじに婚礼の日を迎えました。
当初はいろいろあったけれども、半年を過ぎるころにはわだかまりも解け、世の恋人たち以上に睦まじい仲になりました。
その後もずっと、互いを穏やかにいとおしむ日々がつづいています。
けれども毎年、春先の御苑ですずらんを見かけるたびに、
ふたりとも記憶の底の底にある黒い思い出がほんの少しよみがえり、なぜだか無口になるということです。




(終)













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